真夏の夜の雑記帳

伝説のゲイビデオ『真夏の夜の淫夢』に関連した覚え書き。GOは神にあらず。

『真夏の夜の淫夢』第三章試論

『真夏の夜の淫夢』第三章試論

――「空気」と呼ばれた章のあるべき評価を求めて――

 

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○はじめに

 

 「三章は空気」という見方が一般的である。意味不明で説明不足のシナリオは軒並みの低評価、せいぜい『真夏の夜の淫夢というビデオタイトルに合致した内容が評価されるくらいだ。けれども同作に出演した男優GOが注目されたことから、近年再評価の動きが出て来ている。しかし、本当に淫夢三章に見るべき価値や魅力があるのだろうか。筆者自身としては、第一、二、四章がそれぞれ傑作であることは論を俟たないとの意見だが、第三章までそれと同列に語るのは早計であるように思う。GOなどという一男優が出ていただけで作品の価値を論ずるのは思考の停止した愚かなGO信者のやることではないか。我々理性を持った文明人はそのような餓鬼畜生にも劣る道に堕すべきではないのである。

 

 ゆえに、今回は原典である淫夢三章を鑑賞しつつ、当作品の価値及び魅力について検討してみたい。

 

 

淫夢三章とは何か 

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伝説のビデオ『BABYLON STAGE 34 真夏の夜の淫夢』パッケージ

 

 まずは本稿で論ずる淫夢三章について予め明らかにしておく。

 本作は2000年にコートコーポレーションより発売された記念碑的ビデオ『BABYLON STAGE 34 真夏の夜の淫夢』の第三章として世に送り出された。章のタイトルは「盗撮!そしてSM妄想へ」である。内容としては、友人同士である二人の学生の日常を、自慰や妄想を絡めながら描いたもの。発掘当初は他の章の人気に押され気味で話題にも大して上ることがなく、「空気」と(半ばネタ的な意味でもあるが)揶揄される始末であった。

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1999年、『Babylon Stage 28 First Class』第一章「スカウト」出演時のGO(写真左)

 

  しかし転機となるのは2011年頃、この作品に出演したガングロのギャル男「GO」「神」としてネタにされ始めたことに始まる。すなわち、以前はあたかも空気の如く見向きもされなかった暗黒の淫夢三章に、徐々に偽りの「神」の光が差し込んでいったのである。

 

 

○簡潔なあらすじ

 

 読者諸氏の理解を円滑にするために、以下に淫夢三章の簡潔なストーリーを纏めておく。ただし、場景が今一つ浮かばないという方々には、再度の本編の視聴をお勧めする。 

 

 

『BABYLON STAGE 34 真夏の夜の淫夢』第三章「盗撮!そしてSM妄想へ」

 

 

 大学(東大)の同級生(マジメ君:役名は嶋野)の家に友人(GO:役名は桜井)が遊びに来る。 

 GOがトイレに入っている隙に、マジメ君は盗撮カメラをセットし電源を入れる。 

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 「ゆっくりしていけ」と言伝し、マジメ君はバイトに出かける。 

 部屋に残されたGOは暇なのでオナニー開始。しかしその一部始終は盗撮されている。 

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帰って来たマジメ君と酒盛り開始。GOは酔い潰れてしまう。これ以後は終始無言になり、劇中での台詞もほぼ皆無。 

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 興奮したマジメ君が爪の伸びた汚い手でGOの股間をまさぐると妄想の世界(The world of delusion)へ。 

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 しゃぶりしゃぶられその後(両者ともずっとフニャチン)、69の体勢のままGOがやけに真剣な表情で短髪の肛門にロウソクを挿入、点火。 

 自らの胸にロウを垂らし、身悶える。 

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 いよいよ本番へ。GOがマジメ君に後背位で挿入。 

 やがて背中に体液を飛ばし、チンポをフニャフニャにして皮をかぶせる。興奮していて周囲に気も配れなかったのか、射精する際には足を踏み外し体勢を崩すという醜態も晒した。

 続いてGOはマジメ君のチンポをしごき、射精させる。精液は予想外の勢いをもって飛翔し、マジメ君の顔にまで付着した。自らの精液を舐め、恍惚とした表情のマジメ君だが、それを見てGOは顔を伏せて笑いを堪えている。

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 気がつけば、元の部屋。 

 二人は部屋で寝ていた。これは夢なのか、現実なのか…。 

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(上記はガ板過去スレより一部引用:【アッー!】TDNのガイドライン 夜は魔の手245かれるhttp://society6.2ch.net/test/read.cgi/gline/1235272305/l50

 

 

○内容考察

 

《導入パートについて》

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物語冒頭、仲良く東大の門を出る二人

 

  淫夢三章の流れを大まかに説明すると上記あらすじのようになる。つまり、章のタイトルと同じく盗撮から妄想に至る一連の物語である(物語と言ってよいのかどうかは甚だ疑問だが)。

 マジメ君を中心に語れば(おそらく三章は彼に近い視点から作られている)、家に遊びに来た友人をビデオカメラで盗撮、その後友人が酔い潰れて寝込んだところで妄想に及び後半のシーンに繋がるというところだろう。

 公平中立な立場から言っても、展開に多々強引な箇所が数多く見られた。視聴者に状況を明らかにしてくれるような台詞は全く無く、盛り上がりに欠けたまま淡々と場面が進んでいく。気心の知れた大学生同士のだらだらした日常の空気を描いたと言えなくもないが、それにしては余りに説明不足に過ぎる。

 例として幾つか挙げてみると、

 

・いきなりビデオカメラを仕掛け始める(マジメ君)

・さも当然のように人の部屋でオナニーに耽る(GO)

・何の前触れもなく突然SM妄想のシーンへと移行する

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ティッシュに射精するGO

 

等がある。

 ビデオカメラの下りはまだいいとしても、人様の部屋で突如自慰行為を始めるGOは何なのであろうか。しかもその際、下半身裸のままマジメ君のベッドに腰を下ろしているが、彼はそのベッドが人の物であることを理解しているのだろうか。少なくとも筆者には今一つその心理が分からなかった。妄想パートへの移行においてもそうだ。場面転換の演出は控え目で分かり辛く、一体何が起こったのか理解するまでに時間が掛かる。せめて妄想を始めるマジメ君が独り言でも言ってくれればいいのだがそれすら無く、突然気持ち悪いイエローパンツ一枚で寝ころぶGOとジョックストラップ(いわゆるケツ割れ)を穿いたマジメ君の姿が映し出されるのだから始末が悪い。

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イエローパンツのGO、ジョックストラップのマジメ君

 

 どの場面においても、ただ「説明不足」という一言に尽きる。通常台詞の少ない映像でストーリーを作る場合、演出やカメラワーク、構成等で流れを視聴者に極力理解させようとするはずだ。しかしこのビデオはそのいずれも中途半端に終わり、結果非常に内容が薄く理解し辛い作品となってしまっている。

 

《本番パートについて》

 

 と、ここまで日常パートについて少々厳しい意見を述べたが、『真夏の夜の淫夢』はあくまでゲイビデオである。たとえ導入に失敗していたとしても、本番シーンがAVとして「抜ける」水準に達していれば何の問題もないのではないか。そこで、その後半部分に関しても一つ一つ見逃さないようにしたい。

 まず、場面転換後すぐのペッティングと性器のしゃぶり合い、そしてシックスナインのシーン。ここの欠点は二人とも終始フニャチンであることだ。頑張っているように見えるものの、それが形として(ここでは勃起として)現われずぐだぐだと続けば人は萎えてしまう。

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 次に三章の意味不明さを象徴しているとも言える蝋燭プレイのシーン。GOはシックスナインの状態から急に赤い蝋燭を取り出し、マジメ君のアナルに差し込む謎の行動に出る。そして蝋を自分の胸に垂らし、一人でよがり始める。が、その意図が分かる人などそうそういまい。

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 GOの独り蝋燭遊びが終わった後には、三章でも唯一抜けると思われる挿入シーンがある。GOは後背位でマジメ君に挿入、そのまま腰を掴んでガン掘りする。途中蝋を垂らしたりなどしながら掘り進み、最後は背中に射精。GOの容姿は海千山千の『淫夢』出演俳優中でも屈指であるし、飛び散る精液は固まった赤い蝋と怪しげなコントラストを成して見事なものだ。間違いなくこのシーンは三章最大の「抜きどころ」と言えよう。しかし、如何せん詰めが甘い。なんと最後の射精シーンでGOは足を踏み外し大きく体勢を崩してしまうのだ。男優のペースに合わせて自慰をする人は多いと思われるが、最後の「締め」とも言える射精シーンで間抜けにも体勢を崩し、ガタンと無様な音を立てられなどしては目も当てられない。

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 GOの射精後にマジメ君の射精シーンがある。けれども、これはフィルムの無駄とさえ言えるだろう。GOが手コキを始めて僅か十秒というスピード射精、しかもこの勢いが強過ぎてマジメ君はセルフ顔射してしまうのだが、なんとGOはこれを笑い雰囲気をぶち壊している。余りの短さに視聴者は感情を込める暇すら皆無なのだ。作品の勢いやスピードを大切にするなら、四章の如くガン掘り中にマジメ君にも射精させておけば良かっただろうに。

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 また、前半パートにGOのオナニーシーンがあったことも付け加えておく。たかだか一分間と短いが、使える人には使えるのかもしれない。

 

 

◎総括

 

 さて、長々と三章の内容を振り返ってきたが、いよいよここで全体の纏めに入ることとしよう。

 

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永遠の傑作、第四章

 結論から言えば、淫夢三章は他の収録作(一、二、四章)に比べていささか劣った作品であるとの評を下さねばなるまい。全編を通じて伝わってくる気の抜けた空気と説明不足から来る混乱、またそれを補うことのない構成や編集の拙さが作品の良さを殺している。その出来では、一章や四章は言うまでもなく、二章にすら及ばない。ぐだぐだとした雰囲気に関して言えば二章も同様だが、ストーリーの堅実さと台詞の多さでその欠点はある程度補われている。導入パートだけでなく本番パートにも起伏が無く感情移入もし辛い、また設定の甘さがかなり目立つ。GO、そしてマジメ君という人間については最後までよく分からないし、東大生設定も全く生かされない。

 さらに、疑問なのはタイトルに「SM妄想」と銘打っておきながら、作中では殆どSMらしいプレイが見られないことである。あるのはおざなりな蝋燭プレイのみで、いわゆるSMの「S」と「M」も不分明だった。読者諸兄にはACCEEDの『悶絶少年』や『アナル地獄』等の拷問シーンを思い返して頂きたいが、三章のそれはソフトSMとすら言えないものではないだろうか。感じ方は人それぞれだと思われるが、これではタイトル詐欺と言われても仕方あるまい。幾らか評価出来る点があるとすれば、それは夢とも現とも知れぬ「妄想・淫夢」というこの章のテーマが、ビデオタイトル『真夏の夜の淫夢』とちょうど噛み合っているところぐらいのものだろう。

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謎の蝋燭遊びを披露するGO

 

 ここまで述べてきたところで、筆者の三章評価はある程度定まったと言える。

 結論は、淫夢三章は粒揃いの『真夏の夜の淫夢』作品中で一番の駄作であった、としておこう。随分辛口となってしまったが、これはある意味筆者なりの「三章愛」であると考えて欲しい。

 もっとも、本論のために何度も三章を見返すうちに「三章の魅力」についてもより深く親しむことが出来たように思う。最後にその魅力を幾つか挙げて本稿を閉じることとしたい。

 

 オカズとして抜くために必要とするならいざ知らず、ただ見るだけならゲイでなくても結構楽しめるものなのだ。

 

 

●魅力的な淫夢三章のシーン

 

「ハイ。うん。うん。わかった。 あ、さ、ビール買ってきて。ウン。ハイ、ヨロシクゥ! ハイ」……言わずと知れたGOの名台詞。三章で最も有名な一言といえばこれだろう。ただでさえ印象深い台詞が少ないために、不思議な味のあるGOの演技が映える。

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マジメ君の背中に射精しようとしたGOが足を踏み外して体勢を崩すシーン……笑える場面。本人は真剣にやっているように見えるだけに、この失敗は余計に滑稽なものとして映る。

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自分の精液が顔にまで飛んでしまい身体を震わせるマジメ君と、それを見て顔を伏せるようにして笑いを堪えるGOのシーン……これはある意味作品の雰囲気を壊しているのだが、淡々とした流れからの突発事に新鮮な刺激をも受ける。また、射精シーンというリテイクの難しい箇所で出来した椿事が笑いを誘ってくれるのも良い。

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○おわりに

 

 ともあれ、ここまで読んで頂いた方はどうお考えになったであろうか。おそらく様々な感想をお持ちのことと思うけれども、筆者としては『真夏の夜の淫夢』の持つ魅力の一端に触れ、何かを感じて頂けたなら、それだけでも幸いだ。

 蛇足ながら言い添えておけば、GOの出演如何でこの作品を批評するのは無意味である。徒にGOを信奉する方々は一度虚心にこの淫夢三章を鑑賞してみてはいかがだろうか。きっと神格化などという非人間的な定義をされる前の、素朴な青年・GOを発見することが出来るはずだ。

 

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気持ち良さそうに眠る二人

 

 では、将来もっと多くの人々が淫夢三章に触れて下さることを願いつつ、筆を擱かせて頂く。

 

<了>